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「春日権現験記絵模本」(部分) |
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| 冷泉為恭は、先に見た知恩院本「法然上人絵伝」四十八巻とならんで、「春日権現験記絵」という二十巻にわたる大部の絵巻も若い頃に模写を行っている。但しこれは、林康足、原在明、浮田一惠、小野広隆等とともに為恭が共同で模写したもので、弘化二年(1845)三月に四年にわたる作業を終えたという。このとき為恭二十三歳。若くして京の有力画家に混じって仕事をしている。それだけ早くから評価が高かったのであろう。 「春日権現験記絵」原本は、春日明神の霊験譚五十七編を、年代を追って集成し、絵画化した絵巻。前半は主に、藤原氏を中心とした様々な貴族の身に起きた奇瑞に関する話、後半は、春日社や興福寺に関係した僧侶たちに関わる霊験譚で構成される。 延慶二年(1309)三月の年紀を持つ西園寺公衡による目録が付随しており、それによって、絵は高階隆兼、詞書は前関白鷹司基忠とその子息三人で、左大臣西園寺公衡が願主となって制作を進め、延慶二年にいたって完成を見たことが分かる。公衡や基忠など、藤原氏の一族が、氏神である春日明神の日頃の恩顧に報いるために、絵巻を制作し献納したものである。報恩の思いの強さを示すかのように、絵巻は高価な絹を用いて描かれている。 また、画家高階隆兼は、当時の宮廷絵所預であり、いわば当時の画家の頂点に立つ人物であったと言える。その画風は、華麗な濃彩を用いながら、細部まで緻密であり、当時の貴族たちが用いた衣服や調度品の様子まで克明に描き出される。鎌倉時代の美術品として優れた出来栄えであることは言うに及ばず、延慶二年という制作年代が判明している点や、緻密な細部描写を持つことなど、当時の貴族の生活を窺い知る歴史資料としても価値が高い絵巻であり、為恭もその両面に関心を持って模写に取り組んだに違いない。 為恭ら五人が模写したものは、現在東京国立博物館が所蔵している。これは、いわゆる復元模写であり、伝来の間に生じた絹地や絵の具の剥落は、補う形で完成されている。 作品解説 伊藤大輔(岡山大学文学部助教授) |
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